事業実施内容
◆ニーズ・実態調査
1.調査設計
①目的・概要
今後普及が急速に進むと考えられる次世代自動車において、次世代自動車を活用したカーライフの分野や車両の安全維持に関わる整備技術についての職務内容は変化すると考えられる。
次世代自動車やその周辺知識・技術の必要性がどのように変化しているかをアンケート調査により、 各地域にて今後求められる人材像とそれを教育するために必要とされるスキルを抽出することを目的とする。
②研究調査の必要性
世界的に優位に立つ我が国の環境技術を活用した電気自動車の技術はすばらしく、今後普及が急速に進むと考えられます。電気自動車を活用したカーライフに関わる分野や車両の安全維持に関わ整備技術、電気自動車と家庭をつなぐ充電設備の技術などのメンテナンスの仕事が、今後の環境・エネルギーの変革に大きな影響 をもたらすと考えられます。
現在この分野への整備士(整備女子を含む)の活躍は非常に少な く、従来の人材育成だけでは対応できない状況になることが予想されます。
今後のこの分野の中核的人材に対する教育に整備士(整備女子を含む)の活躍できるプログラムを開発し、今後普及するEV(電気自動車)、PHEV(プラグイン・ハイブリッドカー)、FCV(燃料電池車)等のエネルギー管理に関する技術・知識など、自動車と蓄電池に関わる人材の確保をする必要が迫っています。
本事業では、平成26年度までに開発された全国的な標準モデルカリキュラムを活用し、達成度評価するとともに、地域(長崎、沖縄、福島、兵庫)の企業や業界団体等の人材ニーズ を踏まえた地域版学び直し教育プログラムの開発・実証を行うにあたり、各地域における実態を調査し、その教育を体系的に整理、作成することで、今後の環境・エネルギー対策に寄与する人材の拡大や、実践的な知識・技術・技能を身に付けた整備士(整備女子を含む)を輩出するための学習体系の構築と、成長分野等における中核的専門人材の養成が促進できるものと考える。
③アンケート調査対象・方法
長﨑、沖縄、福島、兵庫地域を対象に自動車業界企業及び整備業者等に対して、次世代自動車及びその周辺技術に対する課題と取り組みの実績および従事する社員の人材ニーズをアンケート調査し、教育カリキュラムの方向性を調査する。
アンケートは、平成27年9月中旬に上記企業へは発送し、9月30日(発送分)までを回収した。
2.アンケート調査結果の考察
①アンケート結果分析
Q1 アンケート回収企業に現在従事する人材について
各地域とも約30%が自動車メーカーのディーラーで約60%が整備専業となっている。
従業員数は1~10人がもっとも多く全体の約50%であり、続いて11~20人の約30%で20人未満で全体の80%を締めている。
年齢については、40代がもっとも多く約36%、続いて30代で約26%、50代21%、60代13%であり、20代は4%となっている。また勤続年数に関しては、10年未満が約23%で少なく、11~20年が約32%でもっとも多くなっている。また女性に関しては全体の約2%となっている。
今回アンケートに回答いただいた業務担当者の多くは、勤続20~30年の30~40代の男性で従業員10人未満の整備専業店で働く人材がもっとも多いと考えられる。
Q2 あなたが思う次世代自動車に該当するものに○印をつけてください。
次世代自動車と思われる車が何かを探っているが、電気自動車が全地域で約20%と高い数字となっていて、次に燃料電池車約18%、プラグインハイブリッド車約17%、ハイブリッド車約16%と続いている。また兵庫県では燃料電池車が約21%で一番多い数字となっていて、関心が高いと考えられる。
Q3 次世代自動車として、上記自動車を選んだ理由と、選ばなかった理由をお答えください。
次世代自動車と思われる車をどうして選んだのかを探っているが、電気自動車についてはやはり有毒ガスの排出がないことが一番であり、燃料電池車では電気自動車と同様に有毒ガスの排出がなく、今後インフラが整っていく期待感が考えられる。またハイブリッド車については、今現在技術的にも安定していて安心感があり、今後も実用的に進化すると考えられる。
また、選ばなかった理由は搭載されるバッテリーの不安要素があると考えられる。
少数意見の天然ガス車やバイオ燃料車に関しては、化石燃料に対する不安やインフラがまだまだ整っていかないと考えられている。
Q4 次世代自動車として、少しは構造がわかるものに○印を記入してください。
業務担当者の次世代自動車に対する知識についての質問ですが、やはり接する機会が多いハイブリッド車やプラグインハイブリッド車の構造に対しての理解度が良く、続いて電気自動車、クリーンディーゼル車と続き、まだまだ接する機会の少ない燃料電池車や天然ガス車、バイオ燃料車の知識レベルは低いと考えられる。
Q5 次世代自動車の知識はどのようにして得られましたか。○印を記入してください。
業務担当者の次世代自動車の知識をどこで身に付けているかについての質問ですが、約46%の人が職場でと回答し、独学で勉強したとの回答も約25%あったが学校でと答えた者は約15%であった。
Q6 上記Q5の知識は、今の職場で必要な知識ですか。
業務担当者の職場での知識の必要性についての質問ですが、約49%の人が今多数販売されているハイブリッド車の知識が必要と回答しているが、電気自動車については約13%となっていて普及途中であることが推測される。
また、整備だけでなく、販売の仕事でも次世代自動車の知識が必要であることもわかった。
Q7 今後最も主流となる動力源に該当するものに○印をつけてください。
今後最も重要となる動力源では、モーターが約37%でガソリンエンジン+モーターの約36%及びディ-ゼルエンジン+モーターの約13%を合わせると約86%となり、今後の動力源がモーターになっていくことが顕著である。
Q8 今後最も主流となるエネルギー源に該当するものに○印をつけてください。
今後最も重要となるエネルギー源では、電気が約37%、水素が約24%で高く約61%を占めている。ガソリンが約15%、軽油が約13%で、ガソリンや軽油の化石燃料もハイブリッド車としての需要を考えるとまだまだ必要とされると考えるがその比率は年々減少すると考える。
Q9 Q8にて尋ねたエネルギーで、少しは知識があるものに○印をつけてください。
今最も知識があるものはガソリンで約23%、続いて軽油の約20%で、あわせてほぼ半数になり、実際に使用されていて、知識が必要な状況がわかる。次に電気で約19%となる。
今後普及が進むと考える水素については約11%でまだまだ知識がある人は少数であることがわかる。
Q10 今後次世代自動車にもっとも必要な知識について、該当するものに○印をつけてください。
予想通り今の主流であるハイブリッド自動車のエンジンとモーターの知識が約24%で、最も多く実際に整備工場で必要不可欠な知識であることが認識された。また2番目に燃料電池車の水素の知識が必要と答えた人が多かったのは、最近大手自動車メーカーより発売され話題になった影響が考えられるが、次世代自動車のエネルギーとして関心が高いと考える。
続いてバッテリーの知識となり、バッテリーに関しては、電気自動車とハイブリッド自動車合わせると約27%になり,一番関心が高いことがわかる。
Q11 今後次世代自動車を取り扱いする場合、必要な知識について該当するものに○印をつけてください。
もっとも多いのが、次世代自動車の整備技術で約33%、続いて安全作業で約27%、最新の技術で約23%になり,技術面を合わせると46%となり、技術面に関心が高いことがわかる。
Q12 あなたの地域で今後必要になるであろう知識について、該当するものに○印をつけてください。
もっとも多いのが、充電スポットの知識で約23%、兵庫県と長崎県で一番多くなっている。
また2番目に多い家庭用充電器に関しては23%で福島県では一番多くなっていて約27%となる。
続いて水素ステーションに関する知識となり、約17%で兵庫、福島、長崎ともほぼ同じくらいの関心であることがわかる。ITSに関しては、福島県がもっとも多く約13%、続いて長崎県の約10%となり意外な結果となった。スマートグリッドに関しては、兵庫県、長崎県、福島県ともほぼ同じ約13%で あった。
Q13 あなたの地域で今後次世代自動車が普及することによる問題点について、記入して下さい。
もっとも多いのが、インフラの整備で充電スポットや水素ステーションなどのインフラの整備の関心の高さがわかった。またメンテナンス面では、次世代自動車の整備について、メーカー側の情報公開が整備専業店にどれだけ進んでいくのか?また技術知識のレベルにかなりの格差が生まれるのではないかなどの、不安要素の記入が多かった。
また少数意見ではあるが、兵庫県では水素に関しての技術知識、長崎県ではITSの普及に関することが記入されていた。
Q14 あなたの地域で今後どのような知識を持った整備士が必要になると思いますか。
ずばり各地域で不足するであろう整備士について尋ねています。
次世代のエネルギーについての知識が必要という意見が各地域で多くなっている。またスペシャリストとかエキスパートなど特化した整備士という意見も多数みうけられた。
またHV・EV・FCVに代表される電気に関する知識の豊富な整備士が必要も多数みうけられた。地域特性としては長﨑県からITSの知識、兵庫県からは水素についての知識など少数ではあるが出ている。
② アンケート結果分析より
アンケート結果の分析より、今後次世代自動車としての整備士を養成するプログラムに必要な知識は、電気自動車ではモーターやバッテリーに関する豊富な技術的知識が必要になる。
また、燃料電池車などのエネルギーである水素に関する知識や、その周辺の技術的知識なども必要である。
地域特性を考えると、少数意見ではあるが、長崎県ではITSに関する知識、兵庫県では水素に関する知識などに特化したユニットプログラムの開発が妥当ではないかと考える。