事業概要
◆本事業の背景
取組成果概要
① 社会的・歴史的背景
我が国の自動車産業は、その100年余りの歴史の中で、品質、信頼性、生産性を不断に追求していくという姿勢を一貫して推し進め、働く人々が成長を遂げていくという人づくりの役割をも担ってきた。また非常に短期間の間に国際競争力を高め、世界経済の変化に対応してグローバル展開を果たしてきた。その結果日本製の自動車は四輪、二輪、小型モビリティ全般にわたって世界で圧倒的な存在感を示すまでに成長している。
従来から、自動車は、環境汚染、省エネルギー、温室効果ガスの排出抑制など社会的課題に対応し、先進的な技術の開発、投入を実現してきたが、今後も引き続き、自動車の環境性能の一層の向上を通じて、その解決に貢献していくことが期待されている。特に、海外資源に大きく依存し、エネルギーに根本的な脆弱性を抱える我が国において、自動車による貢献への期待は極めて大きい。また、高齢化が進展する中で運転能力が低下した高齢者が安全で円滑に移動できる社会の実現や、都市における渋滞問題の解消などに向けて、自動車には更なる進化が期待されている。
こうした様々な社会的要求に応えて自動車の高付加価値化が進む中、環境・エネルギーや高齢化社会への課題に対応した次世代自動車の社会に果たす役割は非常に大きくなるものと考える。
すでに我が国では、地球温暖化対策における自動車産業の貢献への期待、「グリーン・イノベーション」による成長戦略における自動車産業の役割等から、次世代自動車の中でも、EV(電気自動車)、PHEV(プラグイン・ハイブリッド自動車)、FCV(燃料電池車)に重点をおいた戦略が策定されている。
このような歴史的・社会的背景から、今後次世代自動車が急速に普及することは安易に予想され、これらの次世代自動車の機能や構造を理解し、安全維持に関する整備技術や充電設備、メンテナンス等に関する知識・技術・技能を備えた整備士が不足することは明らかである。また高齢化社会の中での安全な移動システムであるITS(高度道路交通システム)や「グリーン・イノベーション」における次世代自動車の役割の多様化など、次世代自動車を取り巻く新しい周辺技術に対応できる整備士も明らかに不足するものと考える。
② 自動車業界からの背景
環境・エネルギー問題は全世界が共通して取り組まなければならない課題である。自動車業界はクルマの環境への負荷を限りなく低減し、人や自然とより良い形で共生できる社会の実現を目指して、地球温暖化防止をはじめ、製品開発段階から生産・使用・リサイクルに至るまでのライフサイクルにおける環境問題への取り組みを進めている。
自動車メーカー各社は、CO2排出削減のため自らが果たすべき役割として、エンジン、駆動系、空気抵抗の低減、車両の軽量化といった数多くの燃費向上技術を投入し、燃費の向上を実現している。また電気自動車、プラグインハイブリッド自動車、燃料電池自動車、クリーンディーゼル車などの次世代自動車の開発・普及を積極的に行っている。 その上、自動車メーカーとサプライヤの関係では、様々な自動車メーカーとの取引を行う立場を生かして課題を見つけ、複数の部品を束ねるシステム全体の開発、提案を行い、それをグローバルに安定的に供給する能力が高まりつつある。
たとえば災害時の電源の確保、電力の安定供給、交通事故の低減、渋滞解消などの社会的な課題に対しては、自動車単体での対応に加えて、システムとして対応する動きも着実に始まっている。
このように自動車業界では、環境・エネルギー問題や社会的な課題に対応するものとして、次世代自動車の積極的な開発を行っている。
しかしながら、次世代自動車の普及が急速に進む中、これらの自動車の機能や構造を理解し、安全維持に関する整備技術や充電設備、メンテナンス等に関する知識・技術・技能を備えた整備士は非常に少なく、一部自動車整備専門学校における整備士養成カリキュラムによって、車両の構造・機能、安全管理に関する法律、新技術等を教育されているが、自動車業界全体の就業人口の数パーセントに過ぎない。しかも、今後普及するEV(電気自動車)、PHEV(プラグイン・ハイブリッド車)、FCV(燃料電池車)等の知識や、次世代自動車と関連したエネルギー管理の知識など、自動車に関わる人材に補完しなければならない知識・技術は非常に多く、従来の整備士養成カリキュラムだけでは、今後求められる整備士の養成に対応出来ない。
そこで、これまでの事業で開発された全国的な標準モデルカリキュラムや既存教育カリキュラム等を活用して、各地域の教育機関等において、地元の企業や業界団体等の人材ニーズを踏まえた「オーダーメード型教育プログラム」の開発・実証を行うとともに、その課題とノウハウを蓄積し、とりまとめ、全国に提供することにより、誰もが学び易い環境の整備が出来るものと考える。